2020年のMotoGPは、FIMロードレース世界選手権第72回大会の最高峰クラスとなる。ジョアン・ミルが第14戦バレンシアグランプリでタイトルを獲得した。

シーズンの概要

マルク・マルケスとレプソル・ホンダ・チームがディフェンディングチャンピオンとしてシーズンに臨んだが、第2戦スペイングランプリの決勝レースでクラッシュを喫し右上腕骨を骨折をした。手術後、第3戦アンダルシアグランプリに強行出場しフリー走行に出走、予選Q1にも出走したものの僅か1周でピットに戻り、それ以降のすべてのセッションを欠場となった上、その無理が祟り骨折箇所に埋め込んだチタン製プレートが破損し再手術、その後レースへ復帰することは叶わずシーズンを終えた。選手権3部門制覇(ライダー・マニュファクチャラー・チーム)を3年連続達成してきたホンダは無冠に終わり、1981年以来となる最高峰クラス未勝利のシーズンとなった。

チャンピオンシップは第2戦から2連勝したファビオ・クアルタラロがリードしていたが、タイヤサプライヤーのミシュランがリアタイアの構造を変更したことなどに全メーカー苦戦し、前半戦終了時点で優勝者6名・首位から25ポイント圏内に9名という大接戦のチャンピオンシップとなった。

その後アラゴングランプリでジョアン・ミルが首位に立つと、3戦連続表彰台を獲得し、第14戦バレンシアグランプリでタイトルを獲得した。同時にチーム・スズキ・エクスターは初めてチーム部門でタイトルを獲得し、2冠を達成した。バレンシアグランプリ終了時、コンストラクター部門でスズキはドゥカティに201ポイント同位まで追い上げを見せたが、最終戦ポルトガルグランプリでジャック・ミラーが2位でフィニッシュしコンストラクタータイトルはドゥカティが獲得した。これはドゥカティにとって2007年に3冠を達成して以来13年ぶりのコンストラクター部門制覇であった。

また、数多くの快挙や記録が更新されたシーズンであった。

ファビオ・クアルタラロ、ブラッド・ビンダー、ミゲル・オリベイラ、フランコ・モルビデリ、ジョアン・ミルの5名は最高峰クラス初優勝を飾った。中でもブラッド・ビンダーの勝利は、KTMがファクトリー参戦してから初めての優勝であり、参戦1年目の初優勝は歴代4人目の快挙であった。

そして3つのチーム(ペトロナス・ヤマハSRT、レッドルブルKTMファクトリーレーシング、レッドブルKTMテック3)は最高峰クラス初優勝をし、ヤマハのサテライトチームの優勝は20年ぶりのことであった。発足2年目のペトロナス・ヤマハSRTは6勝を挙げ、チーム部門2位を獲得した。

ジョアン・ミルのタイトル獲得はスズキにとって2000年にケニー・ロバーツ・ジュニアが500ccクラスで総合優勝して以来20年ぶりで、MotoGPクラスになってからは初めてのタイトル獲得であった。同時にホンダ・ヤマハ以外のライダーのタイトル獲得は2007年ドゥカティのケーシー・ストーナー以来13年ぶりのことであった。

日本人選手の活躍は、中上貴晶が第12戦テルエルグランプリでポールポジションを獲得し、日本人ライダーとしては2004年に玉田誠が獲得して以来16年ぶりのことであった。

新型コロナウイルス

シーズンカレンダーは新型コロナウイルス感染症の流行の影響を大きく受けた。

当初20戦を予定していたグランプリは中止や延期が相次ぎ、6月11日に全15戦となる改訂版の開催日程が発表された。

7月31日に延期されていたグランプリの中止が発表され、MotoGPクラスは1986年以来初めて欧州のみでの開催となった。

影響を受けたライダー

  • 10月中旬、バレンティーノ・ロッシはウイルス検査で陽性反応があり、最高峰クラス最初の感染者となった。それによりアラゴングランプリ・テルエルグランプリの2戦を欠場することを余儀なくされた。その後療養を経て検査で陰性が確認され、ヨーロッパグランプリの土曜セッションから復帰した。
  • イケル・レクオナは、同居する弟に陽性反応が検出され、本人は陰性であったが濃厚接触者としてヨーロッパグランプリを欠場した。その後、陽性が確認されバレンシアグランプリも欠場した。

ヤマハエンジン論争

ヤマハはエンジンの技術的変更に関して、モーターサイクルスポーツ製造者協会(MSMA)の全会一致の承認を得る必要があるプロトコルを無視したとして罰則が科された。

カタールグランプリの時点で認証を得たエンジンとスペイングランプリ・スティリアグランプリ(モルビデリ機のみ)で使用したエンジンが、認証を受けたものとは異なるエンジンバルブを使用していた。

当初ヤマハはバレンティーノ・ロッシ、フランコ・モルビデリがエンジントラブルによってリタイアしたことを受け、安全上の理由からエンジンの開封許可をMSMAへ申請していたが、自説の正当性を裏付ける技術的資料を提出しなかったため開封許可の申請を撤回していた。
非準拠エンジンを使用して獲得したコンストラクター部門の50ポイント、チーム部門のファクトリー・サテライトそれぞれ20ポイント・37ポイントを剥奪した。なおライダー部門のポイントに対してはペナルティは適用されなかった。

その後ヤマハはFIMの制裁を受け入れるとして、決定に対して上訴しない公式声明を発表した。

エントリーリスト

チームの変更

  • レアーレ・アヴィンティア・レーシングは第3戦からエスポンソラマ・レーシングへ改名した。

ライダーの変更

  • ブラッド・ビンダーはMotoGPクラスへステップアップした。彼は元々、Moto2クラスへ転向したハフィズ・シャーリンに代わり、レッドブルKTMテック3へ加入する予定だったが、ヨハン・ザルコとレッドブルKTMファクトリーレーシングが契約を途中破棄したため、レッドブルKTMファクトリーレーシングへ加入した。
  • アレックス・マルケスはMotoGPクラスへステップアップした。彼は2019年シーズンをもって引退したホルヘ・ロレンソに代わる。ロレンソはヤマハのテストライダーへ就任した。
  • イケル・レクオナはMotoGPクラスへステップアップした。彼は加入する予定だったブラッド・ビンダーに代わり、レッドブルKTMテック3へ加入した。
  • ヨハン・ザルコはレッドブルKTMファクトリーレーシングとの契約を途中破棄し、レアーレ・アヴィンティア・レーシングへ加入した。彼は契約を途中破棄されたカレル・アブラハムに取って代わる。
  • アンドレア・イアンノーネはアプリリア・レーシングチーム・グレシーニから出場予定だったが、ドーピングの使用により暫定的資格停止を発行した19年12月17日から21年6月16日までの18ヶ月間の資格停止が課せられた。

シーズン途中の変更

  • ブラッドリー・スミスは、ドーピング使用により資格停止を科せられたアンドレア・イアンノーネの代役として第2戦スペイングランプリから第12戦テルエルグランプリまで参戦した。スミスのMotoEのシートはヤコブ・コーンフェールが代わった。
  • ステファン・ブラドルは、スペイングランプリで負傷したマルク・マルケスの代役として第4戦チェコグランプリから参戦している。
  • ミケーレ・ピロは、アンダルシアグランプリで負傷したフランチェスコ・バニャイアの代役として第5戦オーストリアグランプリと第6戦スティリアグランプリに参戦した。
  • ロレンツォ・サヴァドーリは、ブラッドリー・スミスに代わりアンドレア・イアンノーネの代役として第13戦ヨーロッパグランプリから参戦している。
  • ギャレット・ガーロフは、新型コロナウイルスの陽性反応があり第11戦アラゴングランプリから欠場していたバレンティーノ・ロッシの代役として第13戦ヨーロッパグランプリに参戦する予定だったが、隔離を経て陰性反応が確認されたことにより金曜日のセッションのみ参戦した。
  • ミカ・カリオは、新型コロナウイルスの陽性反応があり第14戦バレンシアグランプリから欠場したイケル・レクオナの代役として第15戦ポルトガルグランプリに参戦した。

グランプリ

2019年からの変更点

  • 日本グランプリの前戦で開催されていたタイグランプリが第2戦の開催となった。
  • アルゼンチングランプリとアメリカグランプリは開催順序が入れ替わった。
  • ドイツグランプリとオランダグランプリも開催順序が入れ替わった。
  • 1982年以来にフィンランドグランプリが復活することにより、1戦増加の全20戦となった。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響による日程変更

開催中止または延期が決まったレース

  • カタールグランプリは第1戦を予定していたが、テスト後に一時帰国していた為カタールにて検疫措置が取られた後に中止となった。Moto2・Moto3クラスはテストの為にカタールに滞在していたため、予定通り開催された。
  • 3月2日、タイグランプリの延期を発表。その後10月4日に開催することを発表。それによりアラゴングランプリが1週間繰り上げられた。
  • アメリカグランプリは、オースティンが緊急事態宣言を実施したことにより11月15日へ延期となった。それによりバレンシアグランプリが1週間遅れの11月22日へシフトされた。
  • アルゼンチングランプリは、11月22日へ延期となった。それによりバレンシアグランプリがさらに1週間遅れの11月29日へシフトされた。
  • 3月26日、スペイングランプリの延期を発表。開催時期は未定である。
  • 4月2日、フランスグランプリの延期を発表。開催時期は未定である。
  • 4月7日、イタリアグランプリ・カタルーニャグランプリの延期を発表。開催時期は未定である。
  • 4月17日、ドイツ政府は8月31日まで全ての大規模イベントの禁止を発表した為、ドイツグランプリは延期となった。
  • 4月23日、オランダ政府は9月1日まで全ての大規模イベントの禁止を発表した為、オランダグランプリは延期となった。
  • 4月24日、フィンランドグランプリの延期を発表。
  • 4月29日、正式にドイツグランプリ・オランダグランプリ・フィンランドグランプリの3戦中止を発表。オランダグランプリはチャンピオンシップ史上初めての中止となった。
  • 5月29日、イギリスグランプリ・オーストラリアグランプリの2戦中止を発表。
  • 6月1日、チャンピオンシップ関係者の移動を伴う遠征開催を避け、欧州での開催を優先するため日本グランプリの中止を発表。1986年以来初めての中止となった。
  • 6月10日、4月7日に延期を発表していたイタリアグランプリは、観客を入れた開催が不可能なことから中止を発表。
  • 7月10日、3月に延期が発表されていたアメリカグランプリの中止が発表された。
  • 7月31日、延期が予定されていたアルゼンチングランプリ・タイグランプリ・マレーシアグランプリの中止が発表された。同時に、11月20日〜22日に最終戦の追加が発表された。

改訂後の開催日程について

  • 6月11日、改訂版となる開催日程を発表。欧州の5か国、8サーキットで13戦を開催する。
  • 開幕戦となる予定のスペイングランプリは2週連続開催。2レース目はヘレス・サーキットの所在地から「アンダルシアグランプリ」の名称で行われる。
  • オーストリアグランプリは2週連続開催。2レース目はレッドブル・リンクの所在地の英語読みから「スティリアグランプリ」の名称で行われる。
  • サンマリノ&リヴィエラ・ディ・リミニグランプリは2週連続開催。2レース目はミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリの所在地から「エミリア=ロマーニャ&リヴィエラ・ディ・リミニグランプリ」の名称で行われる。
  • アラゴングランプリは2週連続開催。2レース目は「テルエルグランプリ」の名称で行われる。
  • バレンシアグランプリは2週連続開催。1レース目は「ヨーロッパグランプリ」の名称で行われる。
  • 8月10日、シーズン最終戦ポルトガルグランプリをアウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェで開催することを発表。ポルトガルグランプリとしては2012年以来の8年ぶりの開催となる。

結果とランキング

結果


ライダーズ・ランキング

ポイントシステム

ポイントは15位まで。完走した場合にのみ与えられる。

マニュファクチャラーズ・ランキング

チームズ・ランキング

脚注


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