飯坂線(いいざかせん)は、福島県福島市の福島駅から飯坂温泉駅に至る福島交通の鉄道路線である。 「飯坂電車」「いい電」の愛称がある。福島北郊の温泉地である飯坂温泉への足であるとともに、通勤・通学路線となっている。

路線データ

  • 路線距離(営業キロ):9.2 km
  • 軌間:1067 mm
  • 駅数:12駅(起終点駅含む)
  • 複線区間:なし(全線単線)
  • 電化区間:全線(直流1500V)
  • 閉塞方式:自動閉塞式
  • 最小曲線半径:160 m
  • 最高速度:60 km/h
  • 最急勾配:45.3 ‰
  • IC乗車カード対応区間:
    • NORUCAエリア:全線(全国相互利用サービス対応交通系ICカードは利用不可)

運行形態

日中は全線の所要時間23分に折り返し時間を2分を加えた25分を運転間隔としている。平日朝夕ラッシュ時は15分間隔で運行されているが、早朝・夜間は運転間隔が広がる。福島駅 - 飯坂温泉駅間の直通列車のほか、桜水車庫が併設されている桜水駅発着の区間列車が運行されており、基本的には全ての列車が桜水車庫に入庫する。

平日の朝から昼前にかけてと夕方から夜にかけての一部の列車は3両編成で運転されている。福島駅で乗り場を共有する阿武隈急行線や多くの地方私鉄とは異なり、ワンマン運転は実施しておらず、全列車に車掌が乗務する。

車掌はドア扱い、戸閉め前の笛の吹鳴、到着・発車時のホーム監視などの一般的な業務に留まらず、車内での乗車券(車内補充券)発売と無人駅や昼の時間帯に駅員がいない駅での乗車券の回収(集札)、さらに無札の旅客に対し降車時に精算などを行う。加えて深夜の桜水駅においては乗務終了後そのまま列車入替の補助を行っている。ドア扱いは運転士もしくは車掌のどちらかがその場の状況に応じて行う。場合によっては運転士が乗車券回収を行うこともある。

利用状況

輸送実績

飯坂線の近年の輸送実績を下表に記す。輸送量は減少している。 表中、輸送人員の単位は万人。輸送人員は年度での値。表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。

収入実績

飯坂線の近年の収入実績を下表に記す。収入は一時増加したが、最近では減少している。 表中、収入の単位は千円。数値は年度での値。表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。


車両

現在の車両

  • 1000系(元東急1000系)
    • 2両編成×4(冷房…有)
    • 3両編成×2(冷房…有)
    • 後述の7000系の置き換えのため、東京急行電鉄(現・東急電鉄)から1000系電車を譲り受け、2016年10月に2編成5両、2017年秋に2編成5両、2018年秋に2編成4両が飯坂線に導入され、2017年4月1日に営業運転を開始した。車内には液晶車内装置と車椅子スペースが設置されバリアフリーに対応しており、車内放送は2か国語対応としている。2両編成には側面の窓ガラスに、福島市の四季をイメージしたイラストと、福島市のマスコットキャラクター「ももりん」のステッカーなどが貼られている。
    • 2018年11月20日の深夜から早朝に行われた第3次車両2編成4両の搬入をもって、1000系全編成の搬入が完了した。1000系導入完了により飯坂線の定期運用車両すべてが冷房付き車両となった。
  • 7000系(元東急7000系)
    • 2両編成×1(冷房・扇風機…有)
    • 1991年の架線電圧1500Vへの昇圧時に2両編成5本と3両編成2本の計16両が導入された。
    • 種車は全て中間電動車からの改造。
    • 源義経の家臣だった佐藤継信・佐藤忠信兄弟ゆかりの地をPRするため、2005年2月27日から同年12月末まで、車体に義経にちなんだシールを貼った「義経号」が運行された。2006年以降も規模は縮小されたが、シールを貼って運行されていた。2013年6月頃から飯坂ホテル聚楽の日帰り温浴施設「いいざか花ももの湯」入館券付の一日乗車券「花ももフリーきっぷ」のPRのため、3編成が青帯から桃帯に変わり、「花ももラッピング電車」として運行された。なお、最後まで青帯で残っていた3両編成が2018年1月に運行を終了したことにより、一旦青帯の編成は消滅した。
    • 2018年(平成30年)11月8日から10日まで、7105号車と7206号車のラストランが、福島駅 - 飯坂温泉駅間で行われた。「おつかれさま7105&7206」の特製ヘッドマークを掲げて走行し、11日には桜水車両基地で「さよなら撮影会」が開催された。残る7101号車と7202号車の2両は2019年3月31日限りで定期営業運転を終了した。以後は鉄道イベントや貸し切り列車などで活用される。

過去の車両

過去の在籍車両のうち、昇圧前には元東急5000系電車のデハ5000形5020 - 23(昇圧時に廃車)以外はすべて吊り掛け駆動車だった。また車両番号の末尾は形式にかかわらず導入順に通し番号で付与されている。なお「デハ5000形」を名乗る車両は1963年製の自社発注車と1980年に購入した元東急5000系の2種類が存在し、両車が同時に在籍していたこともあったが、本項では便宜上前者を(初代)、後者を(2代)として記述する。

  • 1 - 5 → 21 - 25
    福島飯坂電気軌道開業時の車両で木造の2軸単車だった。書類上では1923年関東電気製とされているが、1917年に日本車輌製造が高田商会の注文によりウラジオストクの市内電車用に製造されたがロシア革命により輸送不能になり、転じてきたものと推定されている(形式図)。後に飯坂東線に転属し、21 - 25に改番している。
  • モハ101 - 111(106・107は欠番)
    戦前製の木造ボギー車。戦時中から順次鋼体化改造を受け、下記のモハ1200形となった。
  • モハ1200形 モハ1201 - 1211(1206・1207は欠番)
    戦前製のモハ101 - 111を鋼体化した車両で9両が製造され、日本車輌製造のほかに宇都宮車両(旧日本車輌蕨工場)の銘板もあった。車両によって側面の窓の個数と幅が異なる。時には貨車の牽引にも使用された。内訳は、モハ1201 - 1203は1955年日本車両製、扉間は広窓9枚(窓配置は1D9D1)15m級車で1942年日車製の木造車モハ101 - 103の鋼体化改造車。モハ1204・1205は1948年手塚製作所製の扉間は狭窓11枚(窓配置はD11D)12m級車でモハ104・105の鋼体化改造車。モハ1208は1950年日車東京製の扉間は狭窓13枚(窓配置は1D13D1)15m級車でモハ108の鋼体化改造車、モハ1209・1210は1952年宇都宮車両製の扉間は狭窓13枚(窓配置は1D13D1)15m級車でモハ109・110の鋼体化改造車、モハ1211は1952年日本車両製の扉間は狭窓13枚(窓配置は1D13D1)15m級車でモハ111の鋼体化改造車である。主電動機はモハ1201が45kW×4、モハ1202・1203が63.75kW×4で、後の6両は63.75kW×2であった。
    1991年6月の昇圧時まで残り、同年11月19日付で廃車となったのは1202・1203・1209 - 1211である。
  • デハ3300形 3304 - 3306(元東急3300系電車)
    輸送力増強用として東急デハ3301(入線時に3306に改番)・3304・3305を1976年1月に譲受け。3305-3306は後述の5022-5023入線により1982年11月4日付で廃車・解体され、3304は桜水車庫の入れ換え用としてしばらく使用された後の1986年2月12日付で廃車・解体された。
  • デハ5000形(初代) 5012・5013
    1963年日本車輌製。車体長15.6m、側面客用扉は2か所で台車はウィングばね式の日車NA-13、主電動機出力は75kW。福島交通唯一の連接車であった。
  • モハ5100形・クハ5200形 5114・5215
    1966年日本車輌製。デハ5000形(初代)と車両デザインは同じだが、車体長は18.7mまで延長され側面客用扉は3か所になった。台車はモハが日車NA-19、クハは同NA-19T。主電動機出力は75kW。
  • サハ3000形 3016・3017
    モハ5114・クハ5215と同時に日本車輌で製造された付随車。運転台を持たない点を除いてクハ5215に準ずる。主に朝夕のラッシュ時にモハ1200形に挟まれる形で運用された。1991年11月19日の在来車全車廃車後はうち1両の車体が桜水車両基地内において倉庫として使用されていたが、2017年1月に解体された。
  • モハ5300形 5318・5319
    1971年日本車輌製。モハ5114の車体を両運転台・前面貫通式に設計変更した。台車はNA-31、主電動機出力は90kW。早朝、深夜は単行で、日中は連結して運転された。貫通ドアが取り付けられていたが幌は付いておらず、通り抜けはできなかった。1991年に栗原電鉄に譲渡。
  • デハ5000形(2代) 5020 - 5023(元東急5000系電車)
    1980年12月に5020-5021(東急デハ5026・5025)、1982年10月に5022-5023(東急デハ5110・5112に運転台取付改造実施)をモハ1200形・デハ3300形の置き換えを目的として導入。導入に当たっては直流750Vに降圧、ベンチレーターを押し込み式に変更、前照灯のシールドビーム2灯化などの改造を行っている。1991年11月19日付で廃車となった。

歴史

飯坂線は、福島飯坂電気軌道によって開業した。のちに湯野や梁川などへの路線を持っていた福島交通の前身である福島電気鉄道に合併され、同社の路線となった。「福島交通飯坂東線」も参照のこと。

  • 1920年(大正9年)8月12日:飯坂軌道に対し軌道特許状下付(福島市栄町-信夫郡中野村間、軌間762mm 動力蒸気)。
  • 1921年(大正10年)
    • 7月1日:飯坂軌道株式会社設立。
    • 10月5日:福島飯坂電気軌道へ社名変更。
  • 1922年(大正11年)3月15日:軌間1067mm、動力電気へ変更許可。
  • 1924年(大正13年)
    • 4月13日:福島 - 飯坂(現在の花水坂)間を開業。当時の駅は福島駅・西町駅・曽根田駅・兵庫田駅・森合駅・道下駅・成出駅・前谷地駅・仏坂下駅・飯坂駅。
    • 10月23日:飯坂電車に社名変更。
  • 1925年(大正14年)2月10日:前谷地駅を笹谷駅に改称。
    • 6月20日:笹谷 - 仏坂下間に明神町駅(現在の平野駅)・仏坂上駅(現在の医王寺前駅)開業。
    • 6月21日:道下 - 成出間に清水役場前駅開業。
  • 1926年(大正15年)
    • 2月19日:笹谷 - 明神町間に前谷地駅開業。
    • 4月24日:軌道事業廃止許可(信夫郡飯坂町-同郡中野村間)。
    • 11月20日:仏坂上駅を医王寺前駅に改称。
  • 1927年(昭和2年) 仏坂下駅を小川橋駅に改称。
    • 3月23日:花水坂 - 飯坂温泉間が開業し全通。飯坂駅を花水坂駅に改称。
    • 8月15日:明神町駅を平野駅に改称。
    • 10月1日:福島電気鉄道が飯坂電車を合併。飯坂西線となる。
  • 1927年-1929年頃:前谷地 - 平野間に佐場野古屋駅、平野 - 医王寺前間に石堂駅開業。
  • 1935年(昭和10年)以降:道下駅・小川橋駅廃止。
  • 1940年(昭和15年)3月4日:清水役場前 - 成出間に泉駅開業。
  • 1942年(昭和17年)
    • 12月2日:成出駅・佐場野古屋駅廃止。
    • 12月3日:福島 - 森合(現在の美術館図書館前)間を経路変更し専用軌道化、国鉄福島駅に乗り入れ開始。旧線上の福島駅・栄町駅・西町駅・曽根田駅・兵庫田駅・森合駅廃止。新線上に福島駅・曽根田駅・森合駅開業。
    • 同年以降:石堂駅廃止。
  • 1943年(昭和18年)7月17日:曽根田駅を電鉄福島駅に改称。
  • 1944年(昭和19年)12月29日:清水役場前駅を岩代清水駅に改称。
  • 1945年(昭和20年)3月1日:全線を軌道法による軌道から地方鉄道法による鉄道に変更。
  • 1951年(昭和26年)3月30日:前谷地駅廃止。
  • 1962年(昭和37年)
    • 7月12日:福島電気鉄道が福島交通に社名変更。
    • 9月5日:電鉄福島駅を曽根田駅に改称。
  • 1964年(昭和39年)1月10日:泉 - 笹谷間に上松川駅開業。
  • 1975年(昭和50年)8月20日:笹谷 - 平野間に桜水駅開業。実質1951年に廃止された前谷地駅の復活開業。
  • 1981年(昭和56年)6月19日:貨物営業廃止。
  • 1982年(昭和57年)12月21日:飯坂温泉駅が移転し0.1km短縮。
  • 1989年(平成元年)8月6日:泉 - 上松川間が台風13号による橋梁橋脚流失のため不通に。
  • 1990年(平成2年)3月1日:不通だった泉 - 上松川間が復旧。
  • 1991年(平成3年)
    • 4月1日:森合駅を美術館図書館前駅に改称。
    • 6月25日:架線電圧を750Vから1500Vに昇圧。同時に7000系営業運転開始。
  • 2001年(平成13年)4月8日:福島駅で列車のブレーキが効かずに駅ビルに激突する事故が発生、2両が廃車(福島駅駅ビル衝突事故を参照)。
  • 2002年(平成14年)10月1日:前年4月の事故および京福電鉄での列車衝突事故を受けATSを導入、この日より使用開始。
  • 2004年(平成16年)
    • 2月23日:平野 - 医王寺間の国道13号と交わる踏切のレールにひびが入り運休。桜水 - 飯坂温泉間でバス代行輸送を実施。
    • 3月5日:桜水 - 飯坂温泉間で運転を再開し、全線復旧。
  • 2007年(平成19年)4月:車内放送装置を8トラテープ方式から音声合成装置へと変更、使用開始。
  • 2011年(平成23年)
    • 3月11日:東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で震度6弱を観測し停電に見舞われたため、直後に全線で運転を見合わせる。泉・平野両駅に停車中の列車は運行不能に。
    • 3月13日:13時頃、福島 - 飯坂温泉間で運転を再開し、全線復旧。JR東北本線と共用している福島 - 美術館図書館前間の踏切が復旧されず、同年4月1日まで各踏切に踏切防護要員を配置。
  • 2015年(平成27年)4月1日:IC乗車カード「NORUCA」が利用可能になる。
  • 2017年(平成29年)4月1日:1000系電車営業運転開始。
  • 2024年(令和6年)9月11日:クレジットカードなどのタッチ決済が利用可能となる。
  • 2025年(令和7年)2月5日:全駅の自動券売機でQRコード決済、Suicaなどの交通系ICカードなどが利用可能となる。

駅一覧

  • 全駅福島県福島市内に所在。
  • 全列車普通列車(全駅に停車)。
  • 線路(全線単線) … ◇:列車交換可、|:列車交換不可

駅の営業形態

泉駅と花水坂駅の2駅が全日無人駅、福島駅、桜水駅、飯坂温泉駅は全日有人駅である。その他の駅は平日の一部時間帯のみ駅員が配置されている。駅員がいない駅での切符の回収は、乗務員(主に車掌)によって行われている。

すべての駅の出入口には乗車券自動券売機と福島交通発行のバス・鉄道共通ICカード「NORUCA」、クレジットカードなどのタッチ決済に対応した簡易改札機が完備されている。

過去の接続路線

  • 福島駅:福島交通飯坂東線(福島駅前)
  • 飯坂温泉駅:福島交通飯坂東線(湯野町)

運賃

大人普通旅客運賃(小児半額・10円未満切り上げ)。2019年10月1日改定。

全線でICカードNORUCAが利用可能である。2024年9月11日からクレジットカードなどのタッチ決済でも利用可能となった。2025年2月5日より、全駅の自動券売機でQRコード決済、交通系ICカード(Kitaca・Suica・PASMO・TOICA・manaca・ICOCA・SUGOCA・nimoca・はやかけん)、電子マネー(WAON・nanaco)での決済が可能となっている。ただし、交通系ICカードは交通利用扱いではなく、電子マネー扱いとなるため、PiTaPaは利用できない。

脚注

参考文献

  • 今尾恵介監修『日本鉄道旅行地図帳 2号 東北』新潮社、2008年、p.27 - 主に駅の改廃について。

関連項目

  • 日本の鉄道路線一覧

外部リンク

  • 福島交通 飯坂電車 - 公式サイト

福島交通 飯坂線 mixiコミュニティ

福島交通 飯坂電車

写真表示よくある鉄道写真アルバム「2017/04/02 福島交通飯坂線」の写真(1枚目/7枚中) / Mc101

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